大事なのに知られていない印刷用の「入稿データ」作成上のポイント ~ヌリタシ~

「ヌリタシ」という言葉を聞いたことありますでしょうか?

「ドブ」という言い方をすることもあります。

ヌリタシ

上図で、オレンジの部分が「仕上がりサイズ」、その外側にある上下左右3mmずつのピンクの部分が「ヌリタシ」です。
ヌリタシは、仕上がり線ギリギリまで色やデザインを配置する場合に必要となります。

例えば次のようなデザインです。

ヌリタシイメージ

上図のように仕上がり線いっぱいまで背景やライン、画像がレイアウトされる場合、仕上がり線よりも上下左右各3mmずつ余分にはみ出させる必要があります。
最終的には仕上がり線で断裁されるので、ヌリタシは切り取られてしまう部分になります。

ではなぜ必要なのでしょうか?

それは、断裁が多少ずれるから、です。

断裁は工場側ももちろんなるべくずれないように気を付けてはいるのですが、どうしても若干のズレが生じてしまう場合がございます。
そうすると、例えば上のデザインで水色の帯の部分や色紙の画像の部分にヌリタシがなかった場合、断裁がわずかでもずれると紙の白が端に出てしまうことになります。
それでは仕上がりが美しくないので、多少断裁がずれてもきれいに仕上がるように、余分に色をのせておくんです。

これはどの印刷会社でも暗黙のルールのような感じで求められるので、上記のようなデザインでヌリタシがないと工場側で受け付けてもらえない可能性があります。
そのため、仕上がり線ギリギリまでデザインをレイアウトする場合は必ずヌリタシを作っておかなければいけないのですが、とくにご注意いただきたいのは「画像」です。

最近はスマホやタブレット用のアプリが充実してきて、印刷用のデータを画像で作成するお客様が増えてきました。
画像でのデータ作成にはいろいろとご注意いただきたい点がありまして、それはまた別の記事で詳しくお話いたしますが、その1つがこの「ヌリタシ」です。

例えば、横120mm×縦100mmの印刷物のデータを、全体的に画像で作成するとします。
その時に横120mm×縦100mmぴったりでデータを作成してしまうと、まったくヌリタシがない状態となってしまいます。
背景が真っ白で、端にくっつかない位置にデザインがレイアウトされているのでしたら問題はないですが、端までデザインや色が入っている場合はヌリタシが必要です。
ヌリタシが必要なのにヌリタシが無い画像ですと、当店の方では画像の続きを作ることはできないので、どうにもできなくなってしまいます。
そうすると、お客様の方にまた1からデータを作り直していただくことにもなりかねません。

全体を画像でデータ作成するのでしたら、先ほどの例でいえば、横120mm×縦100mmの仕上がりに対して上下左右3mmずつ余分に「横126mm×縦106mm」でデータを作る必要があります。
あくまでも仕上がりは横120mm×縦100mmなので、上下左右3mmずつは最終的には切り落とされますから、その部分に大切な要素をレイアウトしてはいけません。
※ヌリタシは最低限上下左右各3mmずつあればいいので、3mmよりも多くある分には問題ありません。

お客様からご注文をいただいて、データをご支給いただいたときに、画像のヌリタシがないと、当店としては本当に「どうしよう・・・」となってしまいます。
最終的には切り落とされてしまうヌリタシのためだけにお客様に再度データを作り直していただくようお願いするのは大変心苦しく、
「どうか、お客様のお手元にある元データの画像にはこの続きがありますように」
と祈るような気持ちになります。

画像を使ってデータを作成する場合は、最初から必ず「ヌリタシ」を意識して作成いただきますよう、切にお願い申し上げます。

★データ作成についてお困りのことやご不明点がある場合は、お気軽にお問合せください。